教室紹介
教室紹介
感染制御・検査医学教室は、「感染症診療と感染制御」および「臨床検査医学」を二本柱として、附属病院における診療支援、院内感染対策、検査診断の高度化、そして次世代の医師・医療者育成に取り組んでいます。感染症と臨床検査はいずれも診療科横断的であり、日々変化する医療課題に対して「現場で役立つエビデンス」を生み出し、患者さんの安全と医療の質向上に貢献することを使命としています。
1.当教室の強み
当教室は、感染症診療・感染制御・臨床検査医学を一体として運用し、診断から治療、感染対策までをシームレスに支援できる体制を有しています。この統合的な枠組みにより、臨床課題に直結した多領域の研究を展開できる点が大きな特色です。
臨床支援の中核として、血液培養陽性例を中心とする Microbiology Rounds を日々実施し、年間約500件の診療支援を行っています。介入実施率97%、介入受け入れ率99%と高い水準を維持しており、現場での意思決定を確実に後押ししています。
さらに、抗菌薬適正使用支援チーム(AST)が年間1500件の診療支援を担い、抗菌薬使用量指標であるDOT(Days of Therapy)を、2020年比で2024年にカルバペネム44%、ピペラシリン/タゾバクタム(PIPC/TAZ)22%減少させるなど、データに基づく改善を継続しています。
加えて、感染症、臨床検査、循環器内科、血液内科、呼吸器内科など多様なバックグラウンドを有する医師が在籍し、学内外の関係部門と連携しながら活発な意見交換を行い、学際的な診療・研究を推進しています。
2.感染症診療と感染制御
感染症は当教室の根幹を成す不可欠のテーマであり、現在4名の感染症科医が「診断・治療」と「感染制御」を一体として推進しています。附属病院では感染症科外来および渡航ワクチン外来を担当し、地域の感染症動向に加えて国際的な流行状況も踏まえた臨床対応を行っています。
また、毎日の Microbiology Rounds を通して血液培養陽性例の診療支援を行い、早期の病態把握と適切な抗菌薬選択を支えています。AST活動も積極的に推進し、患者さんの予後改善と薬剤耐性菌の抑制の両立を目指しています。
地域の連携医療機関や行政機関からの感染症コンサルテーションにも積極的に対応しており、平時の診療支援に加えて、危機管理の観点からも地域医療を支える役割を担っています。新型コロナウイルス感染症流行時には、診療・検査体制と感染制御システムの構築の中心的役割を担い、国内外の施設と連携して研究面でも新たな知見の創出に尽力しました。
3.感染症研究
研究面では、新興・再興感染症の臨床および遺伝子学的解析、薬剤耐性菌の分子疫学解析と院内伝播の可視化、医科歯科連携による抗菌薬適正使用の推進と感染性心内膜炎の減少に向けた取り組み、ならびに離散事象シミュレーションモデル等を活用した効果的で持続可能な感染制御体制の設計に取り組んでいます。ミーティングで積極的に議論しながら研究を推進し、得られた知見を診療・感染制御へ速やかに還元することを重視しています。
4.臨床検査医学
もう一つの柱が臨床検査医学です。検査は、診断・治療方針決定・予後評価の根拠となる「医療の言語」であり、診療の質を左右します。当教室では、臨床検査部と密接に連携し、臨床現場に直結する検査診断の高度化と検査運用の最適化を進めています。
稲葉医師は臨床検査専門医として「検体検査管理加算Ⅳ」「骨髄像診断加算」「免疫電気泳動診断加算」を担い、造血器腫瘍や凝固異常の診断支援、肝炎ウイルス検査陽性患者のフォローアップ、院内迅速検査機器(POCT)の管理などに取り組んでいます。研究面ではフローサイトメトリー解析に加え、希少難病である中性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)の研究班メンバーとして、スクリーニング検査法の開発に参画しています。
山野医師は循環器専門医・超音波専門医として、心エコー図による心血管イメージングを利用して、特に心臓弁膜症及び心筋症の臨床及び臨床研究に取り組んでいます。また当大学附属病院は国内でも有数のStructural Heart Disease(SHD)インターベンション件数を誇っており、その中心メンバーとして活躍しています。具体的には、大動脈弁狭窄に対する経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)、僧帽弁逆流に対するカテーテルによる弁接合修復術(クリップ術、TEER)、心房中隔欠損に対するカテーテル閉鎖術などに携わっています。研究面では、これらのカテーテル手技の治療効果に関する研究、さらに心筋症に対する新規薬剤の効果に関する研究を行っています。
5.教育
卒前教育として、医学科3〜4回生を対象とした「感染症・臨床検査医学」の系統講義(9枠)および臨床演習(1枠)を担当しています。クリニカルクラークシップI(CC I)では、静脈血採血、尿検査、喀痰グラム染色など、臨床現場で必須となる基本的検査手技の習熟を重視しています。クリニカルクラークシップII(CC II)では、感染症科・感染対策部・臨床検査部の一員としてチーム医療を体感できるよう、実践的なカリキュラム整備に努めています。
卒後教育では初期研修医教育を重点領域と位置づけ、卒後2年目研修医向けの選択研修プログラムを整備し、年間20名前後の研修医を受け入れています。来年度からは卒後1年目研修医の受け入れも開始し、大学全体の感染症・臨床検査の診療力向上に一層貢献します。
6.今後の展望
今後は、臨床推論を核とした卒前教育をさらに強化し、クリニカルクラークシップを通じて思考力・対応力を体系的に育成します。同時に、感染症専門医および臨床検査専門医の育成を講座として継続的に推進し、大学および地域の診療の質向上につなげます。
また、国・行政・地域医療機関との連携を一層深め、京都府全体の感染症・検査医学の診療・教育・研究に貢献します。臨床・検査の現場で得られるデータを基盤に、薬剤耐性菌や新興感染症、検査診断に関する研究成果を国内外に発信し、院内プロトコルや地域連携の実装を通じて診療と社会実装へ還元していきます。





