教室紹介

教室紹介

 当教室は「感染症診療と感染制御」及び「臨床検査」を領域とし診療及び研究を行っています。
「感染症」は当教室の根幹を成す不可欠のテーマであり、中西医師、笠松医師、伊藤医師、福岡医師の4名の感染症科医が「感染症の診断と治療及び感染制御」に取り組んでいます。具体的には、本学附属病院の中央部門である感染対策部所属医師として、学内外の医療関係者や行政機関等からのコンサルテーションに対応するとともに、感染症科所属医師としてHIV診療や渡航ワクチン外来等を担っています。また、2020年は新型コロナウイルス感染症の流行により、感染対策から重症患者の治療まで、あらゆる方面で日夜奮闘しておりますことは皆様御存知の通りです。研究面では、診療現場に適した感染防止器具の開発、質量分析技術を用いた病原性微生物の迅速診断等が現在の主な研究テーマとなっています。
もう一つのテーマが「臨床検査」です。稲葉医師は、診療面においては臨床検査専門医として「検体検査管理加算Ⅳ」、「骨髄像診断加算」および「免疫電気泳動診断加算」を担っており、造血器腫瘍患者や凝固異常患者等の診断に携わるとともに、肝炎ウイルス検査陽性患者のフォローアップや院内迅速検査機器(POCT機器)の管理、等に努めています。研究面では科学研究費助成課題として「硝子体疾患における眼内Tリンパ球6-color flow cytometry解析」に取り組んでおり、またAMEDや厚労科研の助成のもと、希少難病である中性脂肪蓄積心筋血管症(triglyceride deposit cardiomyovasculopathy: TGCV)の研究班メンバーとして同疾患のスクリーニング検査法の開発に当たっています。
山野医師は、循環器専門医・超音波専門医として附属病院における循環器臨床の大きな特徴の一つであるStructural heart diseaseインターベンション(大動脈弁狭窄に対する経カテーテル的大動脈弁留置術、僧帽弁逆流(MR)に対するMitraClipRによる経皮的クリップ術、及び心房中隔欠損に対する経皮閉鎖術)の中心メンバーとして臨床業務を行っています。研究面ではAMED及び科学研究費助成のもと、「経カテーテル大動脈弁置換術の有効性・最適化・費用対効果を明らかにする(TOPDEAL)研究」や「二次性MRに対するカテーテル修復術のレスポンダー同定と費用対効果分析」に取り組んでいます。さらに長期持続性心房細動に合併する機能性MRに関する関連施設を含めた多施設レジストリ研究を計画中です。

 教育面では、当教室は現在医学科3回生~4回生を対象に「臨床検査医学」の系統講義(9枠)および臨床演習(1枠)を担当していますが、臨床検査医学全般について網羅出来ていないのが現状です。臨床実習(clinical clerkshipⅠ:CCⅠ)では静脈血採血や喀痰グラム染色等の基本的検査手技の習熟を目標としていますが、担当枠が週のべ2日と以前より大幅に減少しており、悩ましいところです。一方、5回生~6回生を対象としたクリニカルクラークシップⅡ(CCⅡ)では、感染症科、感染対策部あるいは臨床検査部の一員としてチーム医療が体感出来るようなカリキュラム作成に努めています。
これらの卒前教育に加えて、私どもは特に初期研修医を対象とした卒後研修に重点を置いています。2004年度から開始された「新医師臨床研修システム」では幅広い初期診療能力の習得に主眼が置かれていますが、「感染症診療と感染制御」及び「臨床検査」は各科横断的性格を有する実践医学分野であり、初期研修の一角を担うべき重要な部門であると考えています。そこで当教室の教員を中心に、臨床検査部所属技師や感染対策部所属看護師の方々の御協力のもと、卒後2年目の初期研修医を対象とした選択研修プログラムを作成し、年間20名前後の研修医を受け入れています。

今後の展望 -卒前・卒後教育面から-

 クリニカルクラークシップでは医学生が診療チームに参加し、その一員として診療業務を分担しながら、医師としての職業的な知識・思考法・技能・態度の基本を学ぶことを目的としており、単なる知識・技能の学習や診療の経験にとどまらず、実際の患者を相手にした診療業務を通じて、将来的に自らが医師として医療現場に立った時に必要とされる診断及び治療に関する思考力(臨床推論能力)・対応力等を養うことが要求されます。このような思考力・対応力を身につける為には、「臨床検査医学」の体系的教育は不可欠と思われます。
 一方、「新専門医制度」では「臨床検査」は基本18領域のひとつですが、臨床検査専門医は現在全国で1,000人未満と少なく、学会員数も他の基本領域17学会と比較すると決して多くありません。本学附属病院臨床検査部では、京都大学医学部附属病院検査部と協力して相互基幹型の「京都臨床検査専門研修プログラム」を作成していますが、これまでのところ登録者はいません。しかし、「臨床検査」領域ではプログラム制研修よりも柔軟なカリキュラム制研修も認められており、当方にも現在1名の他領域専門医が登録中です。昨今、臨床研究中核病院やがんゲノム医療中核拠点病院では臨床検査部の国際認定(ISO 15189)取得が必須となっており、大学附属病院等の基幹病院における臨床検査部の存在が改めて重視されています。この流れに乗って、今後、少しでも多くの若手医師がセカンド・キャリアとしての臨床検査専門医取得に興味を示してくれるように、地道に啓蒙していく所存です。
 「感染症診療と感染制御」及び「臨床検査」という広範な実践医学の領域を当部門の教員のみで網羅するのは不可能ですが、本学附属病院感染対策部及び臨床検査部所属のコメディカル職員と力を合わせて、少しでも本学及び附属病院の診療・教育・研究に貢献出来るよう邁進してゆく所存です。



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